「俺、結構ロックとか好きで、よく聞くんすよ」なんて世間話をしてくれる若者は非常にありがたい。
筆者くらいの年齢になると若者との共通の話題も少なく、親交を深めるべく会話をしようとも、なかなか上手くいかないからだ。
特に小心者の筆者にとっては、このような微妙な距離感は仕事のやり難さにもつながってしまっている。
早く何か話をしなければ・・・。
妙な焦りが二人の間に、さらなる緊張感を生み出してしまっていた。
そんなぎこちない状況に若者は気を使ってくれたのか、自らをロック好きと公言し、筆者と共通の話題でコミュニケーションをはかろうとしてくれたのだ。
なんともありがたい話であるが、こんな自分を情けなくも思う。
筆者のコミューニケーション能力が高ければ、こんな苦労をかけることものないのに・・・。
ありがとう。涙が止まらない。君の投げてくれたボールはしっかりとキャッチし、君に投げ返すよ。
これからは毎日、二人でキャッチボールを楽しもうではないか。
だが、1つだけ気をつけないといけない事がある。この年齢差、何を言っても説教臭く感じられるかもしれない・・・。
「わざわざ話しかけてやったのに、このおっさん色々ウゼェな」なんて思われたら、もう終わりだ。
そうしないためにも出来る限りフランクに、出来る限り否定せず、出来る限り相手の趣向に共感するような形でボールを投げなければならない。
筆「ええ!?そうなんだ!最近のロックバンドって凄くカッコいいよね!!若者君の好きなバンド教えてよ!」
我ながら惚れ惚れするような返球だ。
キャッチボールの基本である相手の胸を狙った優しい投球に、若者君もきっと満足してくれるはず。
そんな筆者の配慮ある返球に対し、若者くんはまさかの返球をしてきたのだ。
若「SPYAIRとかですかね〜」
筆「あぁ・・・あのアニメソングとか歌っているバンドだよね・・・」
若「そうなんすよロックですよね!!」
筆者「うん・・・」
今日は色々言わない。今日は色々言わない。今日は色々言わない。今日は色々言わない。今日は色々言わない。今日は色々言わない。今日は色々言わない。縮まろうとしていた二人の距離感は、筆者の余計な価値観によって離れつつあった。
これはあれだ、「趣味は料理です」なんて発言しているやつの得意料理を聞いたときに、“炒飯”ですと答えられたときガッカリ感と同じだ。
本来であれば答えなど関係ない。
他愛もない会話を楽しめば良いだけだ。それなのになぜ・・・。なぜ・・・「SPYAIR」なんだ。
いや悪くない。悪くないけど。おじさんの求めるロックバンドの定義とは、なんか違うんだよ。これがジェネレーションギャップってやつなのか。
という訳で、本日は「SPYAIR」というバンドについて色々と書かせていただこう。
メジャー・デビューから怒涛のタイアップ。SPYAIRってバンドに感じた違和感?
画像引用URLSPYAIR STAFF (@SPYAIRSTAFF) | Twitter
2010年8月にシングル『LIAR』にてメジャー・デビューを果たしたSPYAIR。翌2011年にはアルバム『Rockin' the World』なんてロックと自らの存在感の強さをアピールするようなタイトルのアルバムをリリースした。
ちなみに今作のタイトルには、「俺たちの音楽で世界をROCKしてやるぜ!」というバンドとしての将来的なヴィジョンが込められているらしいのだが、筆者のような根暗なバンドマン好きな人間からすると、蕁麻疹の出そうなポジティブさである。
そんな彼らの音楽性については後述させていただくのだが、今作の驚くべき部分は、そのタイアップ曲の多さ。なんと収録曲14曲に対し5曲がタイアップ曲。アニメ好きの人ならば、SPYAIRという名前は知らなくても、彼らの楽曲を耳にしたことがあるのではないだろうか?
いやはや1STアルバムにしてこの待遇。彼らの実力なのか?はたまたレコード会社の販売促進力の強さなのか?考え出したらキリがないのだが、ただ1つだけ理解できることは、SPYAIRってバンドはメジャーで活躍することが約束されたバンドってこと。
さらにアーティスト写真をご覧頂けばわかるように、メンバーは総じてイケメンでございます。バンドあるあるとかでよく見かける、バンドメンバー4人中1人はブサイク説や、ドラムメンバーの8割はデブなんて話は全く該当しない感じ。
とはいえ、SPYAIRにも若干1名、バッドマンの相方みたいなアイラインが入った奇抜なメンバーも在籍していますが、デブだったり不細工ではないので、バンドのヴィジュアル偏差値には影響ありません。この辺もまたバンドっぽくない理由の1つであります。なんとも漂う、レコード会社主導で結成された感の強い養殖アイドルバンド臭。
しかしながら実際のところは、SPYAIRというバンドは2010年のメジャー・デビュー以前からインディーズ・シーンにて活動。むしろIKE、KENTA、MOMIKENの3名はSPYAIR以前のバンドからの付き合いとのこと。
筆者の予想は大外れである。いやはや、だって彼らの整ったヴィジュアルと音楽性は、完全に“養殖バンド風”な印象を受けるじゃないですか・・・。
SPYAIRの音楽ってJROCKっていうよりもJPOPじゃない?むしろアニソンベースのロックじゃない?
SPYAIRの楽曲ってタイアップからが多いでしょうか?ROCKと言うかPOPって感じではないでしょうか。さらに例えるならアニソン寄りのロック・ポップ
って感じ。アニメ映画『銀魂』の主題歌として起用された『現状ディストラクション』がまさにそれ。
今曲はSPYAIRのシングルの中でもNO1セールスの楽曲らしく、SPYAIRというバンドの名を世に広げるきっかけとなった作品である。
ROCK感の強い歯切れの良いギターリフのイントロとメリハリのある進行、サビの疾走感があいまった“ROCKナンバー”なのだが、あまりに綺麗な楽曲の展開と、ボーカルの歌唱力を全面に押し出した作風はポップス感が非常に強く、「俺たちの音楽で世界をROCKしてやるぜ!」なんて意思は全く感じられない。
とにかく勢いのあるパワフルな歌唱と楽曲の進行は、アニメソングにロック風味を足したアニソンロックお手本のようなものである。このような楽曲が多いのもタイアップの多さが原因なのだろうか?
とはいえ、こういった楽曲の多さもSPYAIRにロックバンドとしての魅力を感じられない理由の1つなのではないだろうかと筆者は考えている。
彼のルーツはニューメタルの雄『Korn』なのに、なぜ現在の音楽性になったのだろうか?
SPYAIRのメンバーのインタビューを読んでみると、自らの音楽性に大きな影響を与えたバンドは、アメリカのニュー・メタルバンドの『KORN』とコメントしているのを度々見かける。
KORNといえば、あの特注のマイクスタンドがうん百万円するだとか、金属をぶっ叩いたようなベース音とアタックの強いリズミカルなドラム、ノイジーかつ不協和音にも似たダークかつ病的なサウンドのバンドKORNのことなのだろうか?そういったルーツを持つ割には、全くもってSPYAIRの音楽性からはKORNの影響を感じることができないのはなぜなのだろうか。
確かにリフ感の強いギターサウンドは、言われてみればKORNの影響なのかもしれないが、ありがちと言えばありがち。現在のSPYAIRのようなテンプレ的な歌謡ロックからは、あ〜確かにKORNぽいね。なんてこと絶対に言えない。それほどまでに乖離しているKORNとSPYAIRの音楽性なのだが、どうやらインタビューを読んでみると、現在の音楽性はリスナーをしっかり意識した作風に変化させているようだ。
UZ 「そこは今、一番に考えていますね。リフどうこうより、心にグッとくるメロディをSPYAIRでやりたい。たぶん“和製KORN”を意識してた時期には考えられないですけどね、あの頃はリフ命でしたから(笑)。でもその当時から変わってないのは、自分がカッコイイと思う音を鳴らしたいっていうこと。そういう意味で妥協はずっとしてないです」
引用URLインタビュー:へヴィなサウンドとポップなメロディが共存するSPYAIRの1stアルバムが完成! - CDJournal CDJ PUSH
確かにインディー時代のSPYAIRの楽曲を聴いてみると、現在よりもリフ感が強く全体的にダークかつヘヴィな仕上がりとなっている。ベースのMOMIKENもアイラインではなくガスマスク着用という気合の入れよう。噂ではボーカル以外、皆ガスマスクを着用していた時期もあるとのこと。どうやら当時の彼らは現在とは違う意味での“バンドっぽさの演出”をしていたようであるが、バンドとしてのステージを登るにつれ、その音楽性にも方向転換があったということなのだろう。
ロック人生の始まりのバンドSPYAIR?
SPYAIRに対してロックバンドとしての魅力がないなんてことを色々と書いてみたのだが、彼らの存在ってロックバンドの間口を広げることに多大な貢献していると思うんです。
普段ロックを聴かない層の人達がアニメ主題歌でSPYAIRの存在を知って、そこから他のロックバンドに興味を持つなんてパターンも最近では多いようで、筆者の若かりし頃とは少しばかりロックの入口も変わってきているようです。
それと同じようにロックというジャンルの定義も、筆者の若かりし頃とは変わっているのではないでしょうか?
ま〜筆者の世代が求めるロック像とは少しばかり違いますが・・・。
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