今や名実共とに国内最高峰のロック・バンドとなったONE OK ROCK。そんな彼らのニューアルバム『Eye of the Storm』が2019年2月、ついにリリースされた。今作に対する筆者の率直な感想としては「ファン試されてない?」って感じでございます。はい。
9作目『Eye of the Storm』ついにファンが置いていかれた!?
筆者は以前にこんな記事を書いております。
内容としましては、まさにタイトル通りでありまして、アルバムをリリースするたびに、進化し続ける音楽性に、いつか国内ファンが置いていかれるのでは!?という不安を、レーベル移籍や音楽性の変化から予想した記事であります。
実際のところは、2017年にリリースされた前作『Ambitions』は良作であり、ファンからの支持も高い作品となりました。が、今作『Eye of the Storm』では、筆者の予想と近しい状況となっている気がします。
特に肩を組みながらヘッドバンキングをしたいような、若年層のウェイウェイOORerや、中期(Nicheや残響、人生あたり)の日本語と英語が絶妙に調和したメッセージ性の強い楽曲を好むリスナーあたりは、少しばかり求めるものと違うのではと筆者は考えます。
とりあえず色々言う前に『Eye of the Storm』のレビューをしてみようと思います。
ONE OK ROCKのバンドとしての決意を感じさせてくれるニューアルバム『Eye of the Storm』
とりあえず筆者はまだ国内版しか聴いておりませんので、そちらの感想がメイン。インターナショナル版については、タイミング次第で追記していく感じで。まずは収録曲から。
1.Eye of the Storm
今作では過去作品にあったようなイントロから開幕曲という流れが取られていない。しかしながら「イントロ」「開幕曲」の2役を見事に果たしているのが今曲である。前作に収録されている『Bombs away』では、国内ロック・バンドの最高峰となった彼らの風格する感じられる静と動が表現されていたが、今曲ではもうキャリアの厚みからなる「渋み」すら感じられる。男は多くは語らない。そんな印象。
2.Stand Out Fit In テレビCMタイアップ
少し寂しげな開幕曲からは打って変わって、軽快な展開の『Stand Out Fit In』。和訳はみてはいないが応援ソングっぽい雰囲気で、力が湧き上がるポジティブソングぽい感じである。MVでは「人種問題」というテーマも含まれているようで、海外活動を通して自らが体験した疎外感などが込められているのだろうか?インタビューが気になる。
3.Head High
全体的にシンプルな展開の楽曲。普段だったら歌い上げてしまう印象の強いTAKAがいい意味で抑え気味な印象を受ける楽曲。少しばかりカスれる位の声域が何か妙に優しげで色っぽい感じです。
4.Grow Old Die Young
MVがあったら絶対に真っ暗闇でしょって雰囲気で始まる今曲。個人的には結構おすすめ。ちょっと今日は落ちたい気分だなって時の相棒に最適です。焦燥的と言えばいいのでしょうか?少しばかり重めのテーマを自問自答する寂しい歌声はとってもエモーショナル。シンプルな楽曲の展開が耳に残ります。
5.Push Back
タイトル通りの力強い信念を感じさせてくれる1曲。個人的には一昔前のハードロックの始まりを彷彿とさせられるスケールのでかいピースフルな出だし。(合唱?重ねどり?の部分だけですが笑)ミドルテンポな進行がとにかく力強い。イントロ曲にも適している気がする。
6.Wasted Nights 『キングダム』主題歌
雨風を利用した“いかにも”な演出は、ありがちながらも嫌な気はしません。っていうかむしろ好き。どんな苦難も乗り越えてやるぜって!!って強い意志がつたわってくるじゃないですか。
しかしながらこういった演出って、どうしても壮大に見せるための小道具って感じがして、楽曲負けしているバンドが多いのもまた事実。ですが我らがONE OK ROCKは一味も二味も違うのです。
一言でいえば、過剰な演出に負けることのない果てしなく広がる壮大な大地を思わせる楽曲。
完全に主題歌として起用されている『キングダム』の影響ではありますが、『Eye of the Storm』というアルバムタイトルに相応しいスケールのデカさ
を感じさせてくれるのです。
それにしても水量多すぎ。昨今まれに見るびしょ濡れ具合。
7.Change
今アルバムの リード曲として先行配信された『Change』。CMにも起用されていたため、耳にした事のある方々も多いのではないでしょうか?
筆者も聴いた瞬間「え!?ワンオクなの?」なんて過去作品とのテイストの違いに大いに戸惑いました。まさにチェンジって感じで、新たなステージ、新たな方向に向かう彼らの意思が込められております。
ノリの良い音の広がりが魅力のカントリー・ロック風なチューン。なんとも和やかな気分にさせてくれます。
8.Letting Go
エネルギッシュでパワフルなロック・バンドというイメージの強かったONE OK ROCK。若者の代弁者であり象徴であった彼らも気がつけば30代。気がつけば立派な大人になりました。今の彼らだからこそ表現できる「大人なしっとり感」でございます。
9.Worst in Me
全体的にリズム重視の楽曲の多い今作。しっかりと聞かせつつも、リズミカルな歌メロが心地よくもあります。
10.In the Stars (feat.Kiiara)『フォルトゥナの瞳』主題歌
Linkin Parkとも共演したことのある シンガー「Kiiara」を迎えた今曲では、次世代の歌姫とTAKAの美声が絶妙な絡み合いを聞かせてくれます。シンプルな展開ながら美しい旋律は、木漏れ日のような優しさ。
11.Giants
力強くも寄り添うような歌詞が魅力的な今曲。応援ソングのようであり、自らの意思を確認しているようでもある。
12.Can't Wait
今作のコンセプトが大いに盛り込まれた1曲。ボーカルラインも含めて楽曲の全体のバイブスを生んでいる。メロディのためのボーカルではなく、楽曲を活かすためのボーカルって感じでしょうか?
13.The Last Time
今作には恒例のシークレット曲が存在しておりません。そのため、今曲『The Last Time』 が、正真正銘の最後のアルバム収録曲となるのです。いかにも最後らしい奥行きのある楽曲。デジタルサウンドの挿入タイミングと要所要所の演奏の溜め、TAKAの歌い上げボーカルラインが「ラスト」って感じを演出してくれています。位置的に⑥近いのかな。
個人的な感想としては、考えれば考えるほど面倒なアルバム『Eye of the Storm』
今回はワンオクロックの最新作『Eye of the Storm』に書かせていただいたのですが、今作って考えれば考えるほど面倒なアルバムなのではないでしょうか?
確かにアルバム単体の評価としては文句の付けようのない高品質な作品ではありますが、ONE OK ROCKというバンドの作品の1つとして考えた場合は波紋を呼ぶ事は必至。良メロが売りだった楽曲は、リズム重視の海外テイストに変更され。ロック感は減少。と、多くのリスナーが困惑しております。
更には熱心なワンオクファンですら、今作は賛否の対象なようで、「第2章の始まり」「終わった・・・」なんて意見が出ている始末。この辺に関しましては完全に趣味の領域ですので、合わないなら無理に聴く必要もないですし、評価する必要もないのではなんて事を筆者は考えてしまいますが・・・。とりあえずロック好きの筆者は過去作品で十分楽しめるかなって感じ。
少しばかり否定的な流れではありましたが、バンドとしての目標である「世界で活躍するロックバンドになる」って部分は進んでいますし、国内リスナーの視野を広げるってスタンスは非常に好感。
楽曲の変化の目的とかは過去記事で。