私がどれだけ怒りを堪えているかなんて、君達のような一般市民には到底理解する事なんて出来ないだろう。
昨今の民主化の推進などにより、民たちは自らが政に関わっていような気分に陶酔しているようだが、我々が政に口を出さず傍観しているのは、君たちのような社会の歯車が少しでも希望を持って生きられるようにするための優しなのだよ。
どれだけ時代が流れようとも、我々は生まれながらにして特権階級であり、君たち民衆を統べるべき尊い存在なのだ。
それをなんだ、最近では我々“貴族”の名を語り、民たちから支持を集めているバンドがいるらしいではないか?
しかも国という垣根を超え、私と親交の深い男爵である「髭男爵」の名を彷彿とさせる、『Official髭男dism』などというバンド名で活動しているようで、民たちからは「髭男」の略称で親しまれているらしい。
あたかも偶然を装って「髭男爵」と同じ略称を狙うあたりは、何とも民らしい姑息で滑稽な発想である。
確かに我々のような高貴な存在である貴族に憧れる気持ちはわからなくもないが、名を語り無知な民衆を煽動するとは言語道断。とにかく紛らわしい。おかげで「髭男」というキーワードで“貴族のお漫才”を検索すことが困難になってしまったではないか。
もし法が許すのならば、今すぐわたし自ら島国に向かい、髭男爵の名誉を守るべく、貴族の名を語る不届き者に対して白手袋をダース単位で投げつけてやりたいくらいである。
が、今日のところは貴様ら『Official髭男dism』が貴族の名を騙るに相応しい存在かを見極めてやろうじゃないかーい。
目次
- まず「Official髭男dism」ってバンド名がよくわからないじゃないかーい
- 貴族に憧れるバンド!?「Official髭男dism」
- 変幻自在のPOPバンド「Official髭男dism」『ノーダウト』
- 国民的なバンドを目指すがゆえに、したたかさを香らせる「Official髭男dism」
- ポップスの探求者「Official髭男dism」
まず「Official髭男dism」ってバンド名がよくわからないじゃないかーい
まず、このモノたちが貴族の名を騙っているか騙っていないか以前の問題に、バンド名が読めない民が大半なのではないだろうか?
それにしても日本の識字率は99%と発表しているにも関わらず、このような珍妙なバンド名を付けてしまう人間がいるあたりは、字の読み書きはできても、意味を理解し利用する事が困難な人々が多いのだろうか?と、まーそんな話は置いて本題に入ろう。
どうやら彼らのバンド名は「オフィシャルヒゲダンディズム」と読むらしく、「髭の似合う歳になっても、誰もがワクワクするような音楽をこのメンバーでずっと続けていきたい」という意思が込められている とのこと。
いやはや、なんとも美談である。まさにバンド。メンバーを愛し共にひとつの夢に向かう。定番であるが王道でもある。こんな話は嫌いではないよ。
だが、バンド名の由来は理解できたが、まったくもって「Official髭男dism」というバンド名には結びつくことのない事実。
なんだSPI総合検査のように何かしらの統一性に着目しなければ読めないのか?ふざけすぎだろ。絶対にノリとインパクトでつけたんでしょ!!私わかってるんだから!!1人くらい髭を生やせよ!!
などとクダをまきたくなるほど、「あ!そういこうとか!!」なんて風に1ミクロンも腑に落ちることのないバンド名である。
Official髭男dismと同じ略称である本家「ヒゲダン」こと、髭男爵を見てみろ名前とヴィジュアルが見事にシンクロしているだろ。
仮にバンド名とメンバーのヴィジュアルが一致していなくても、「Mr.Children」のように、バンド名の由来を聞けば「あーあーそういうことね!!」なんて具合に素直に納得できるはずである。
それくらいバンド名とメンバーのヴィジュアルや由来の統一感は重要なポイントなのである。
とはいえ、今更いくら言ってもメジャーデビューまでしてしまっているので仕方のないこと。今回はコレくらいにしておこう。
次は「Official髭男dism」のメンバーが貴族に相応しい振る舞い(音楽性)なのかを確かめてやろう。貴族の名を汚すような場合は晒し刑を覚悟しておけ。
貴族に憧れるバンド!?「Official髭男dism」
画像引用URLhttps://higedan.com/profile/
写真 左→右 Ba/Sax:楢崎誠 Gt:小笹大輔 Vo/Pf:藤原聡 Drs:松浦匡希
なんとも紛らわしい略称で有名な「ヒゲダン」ことOfficial髭男dism。
貴族の名を騙り、バンドとして名をあげようと奮起していた彼らは2018年に『ノーダウト』にでメジャーデビューを果たす。
我々で言う舞踏会デビューといったところだろうか。また一歩、本物の貴族に近づいたという訳だな。
最近のアーティスト写真を見ていると、なんとなく我の強い営業マン風だったボーカルの藤原も、大分育ちが良さそうに見えてきたし、楢崎と松浦もバンドの要であるリズムを支える者としての責任感が顔に滲み出てきている。メジャーデビューから1年。だいぶ良い面構えになったではないか。
もう一息で貴様らを一代貴族として憧れの貴族の仲間に入れてやっても良いぞ、なんて事も考えたが、ギターの小笹。貴様はKEYTALKでベースを弾いていないか?いや他人の空似か・・・。とりあえず“お約束”のヴィジュアルイジりも終わったので、それでは本題である音楽性について考えてみようではないか。
変幻自在のPOPバンド「Official髭男dism」『ノーダウト』
それでは「ヒゲダン」の楽曲の特色を知るべく、まずはYOUTUBEでの再生回数が4000万回以上と、日本人の約3人に1人は視聴している『ノーダウト』を聴いてみよう。
今曲はOfficial髭男dismにとってもメジャーデビューとなる特別な楽曲であり、さらにさらには月9ドラマ『コンフィデンスマンJP』の主題歌としても起用されたタイアップ曲である。
なんとも人を食ったような怪しげなイントロから始まる今曲。
楽曲の展開自体はメジャーらしいガチガチの進行ながら、シンプルでリズムカルなミドルチューンの楽曲は、軽快でついつい手拍子をしてしまいそうなグループ感の強いものである。
そしてそんなリズムの波を、ボーカル藤原は少しばかりカスレたエネルギッシュな歌声で見事に乗りこなしているではないか。
歌詞も詐欺師が活躍する今作の世界観と見事にマッチ。怪しくもコミカルに今ドラマの世界観を表現している。少しばかり鼻に付く感じではあるがな・・・。
それにしてもOfficial髭男dismというバンドの音楽性は、私たち貴族が触れる芸術性の高い教養ありきの作品とは違い、余計な事を考えることなく人々が楽しめる「音楽」という言葉の本質が詰まっているようだ。まさに民たちの音楽“POP”である。
国民的なバンドを目指すがゆえに、したたかさを香らせる「Official髭男dism」
とりあえず「ヒゲダン」というバンドの音楽性はR&Bなどを基盤とした大衆向けPOPということは理解できたのだが、取り寄せた経歴を見ていると、様々なアーティストに影響を受けているようである。
例えば現在の音楽性にも色濃く反映されている世界の主流ポップスの根底にあるブラック・ミュージックは当然のことながら、ロックやメタルなどの現在の音楽性とは、やや掛け離れた様々なジャンルの影響をも公言しているのだ。
それなのに何故、ここまで髭男の音楽性はポップなのかーい。って感じなのだが、その理由としては、やはり下記インタビューの通りなのだろう。
小笹 歌詞を書いているのは藤原くんですけど、僕としても刺さるものがたくさんあるのが今回の作品です。僕たちは「国民的なバンドになりたい」と思ってやっているんですけど、国民的なバンドさんたちの曲は、人の人生に寄り添う部分があるじゃないですか。そういう刺さる部分を大事にしたのが、『MAN IN THE MIRROR』です。
引用URLhttps://rockinon.com/feat/officialhigedandism_201606/page:1
以上のように、Official髭男dismは、貴族ではなく“国民的なバンド”を目指しているのである。
そもそも彼らは、サラリーマンとして働きながらバンド活動に勤しんでいた経歴がある。
そんな「安定」を捨ててまでミュージシャンとして生きていく決意をしたからには、「成功」は最優先の必達条件なはず。
なんとも現実的で慎重な話であるが、昨今ではこういった方法でバンドとしての成功を目指すバンドマンも多いらしく、少し以前の例を出すと[Alexandros]がまさにそれ。
計算高いといえばそれまでだが、「俺は東京に行ってロックバンドの頂点をめざすぜ!!」なんて勢い任せに上京しときながら、深夜のコンビニでレジを打つバンドマンよりかは、しっかり国の税収などに貢献できる、自分の人生をしっかり考えた選択である。
そんな慎重なOfficial髭男dismの最適解が超ド級のPOPサウンドであったのだろう。なんともしたたかな奴らである!!
ポップスの探求者「Official髭男dism」
妙に藤原が全面に押し出されたミュージックビデオ『宿命』。見れば見れるほどジャイアン・フェイス。なんとも力強い藤原のパフォーマンスは、やや癇に障る。
今曲を聞いてもらえばわかるように、彼らの作る楽曲の歌詞は、常に「苦難」と「ポジティブ」が交差している。さらに言葉選びがとにかくストレートで耳障りが非常に良い。
「JPOPリスナーに響く100の言葉」なんて本があったら絶対に記載されているワードばかりであるし、意図したメッセージが確実にリスナーに伝わるようにできている。
その言葉達はあまりに前向きすぎて、ちょっとばかり信仰臭すら感じてしまうのだが、「Mrs. GREEN APPLE」がJPOPシーンに旋風を巻き起こしているように、大衆達が好むのは前向きでキレイな言葉達である。
いうならば「ノン・オブラート・突き抜けストレート・立ち上がれ・明日に向かって駆け抜けろ・僕らの愛は世界を照らす戦法」。
まさに民たちを勇気づけるための音楽JPOP。
最早完全に狙ってるだろ?Official髭男dismって感じなのではあるが、それはあくまで彼らの音楽性の背骨のようなものであって、血肉を構成しているのは世界のポップスなのだ。
過去にリリースしたアルバムタイトル(『MAN IN THE MIRROR』)がマイケル・ジャクソンの楽曲名だったりしているので、世界のPOPスターの影響下にあるのは当然ですよね。
例えば今曲『宿命』では、現代的なエレクトロなビートを軸にしつつも、所々にオールディーズなアメリカンPOPのエッセンスが散りばめられたりしている。そんな様々なポップ要素を見事なまでにガチガチのJPOPサウンドに仕上げているのが「Official髭男dism」というバンドということなのだろうか?
今やヒゲダンといえばこの曲!!YOUTUBEで再生回数6000万回突破の「Pretender」の制作過程のインタビューでは下記のようにも答えている。
藤原聡(以下、藤原):まず制作チームの方とお話をした時に「ノーダウト」の流れのものが欲しいという感じではなくて。映画になるとスケールも壮大になるので、それにマッチした楽曲を、という話で進めていきました。なので、スタート地点でかなり広がりのある感じになっていくのかな、というイメージはあったので、UKの空気感を意識した音作りをしてみました。
――藤原さんの中のUKの空気感って何年代ぐらいですか?
藤原:僕、実はUKについてはあまり詳しくなくて。チームの中に詳しいスタッフがいたのでお願いして、オススメの楽曲を何曲か教えてもらって聴いたり、探したりして、いろんな要素をまず得るための研究をしましたね。
引用URLhttps://realsound.jp/2019/05/post-353587.html
やはり彼らの音楽が多くの人々に支持される理由としては、自らを育んだ音楽だけではなく、常にリスナーの必要とする音楽を取り込み続けているからこそなのだろう。まさに音楽の探求者。彼らは貴族は目指している訳ではなく、POPシーンの最前線で成功し続けるバンドを目指しているのではないだろうか。
機会があったら茶会で演奏させてやろうではないか。それでは。