「浜崎あゆみ」の名前を知らぬ人などいないと筆者は思うのだが、実際のところはどうなのだろうか?
もしかすると現在の中高生の中には知らないって人もいるかもしれないが、20代から50代位の年齢の人達なら「絶対」に彼女の名前を知っているはずだ。
全盛期の彼女の存在は「女子高生のカリスマ」と言われるほどで、自らの世界観を書き記した「歌詞」に対する共感だけではなく、その影響はファッションやメイクなどのライフスタイルまでに及んでいた。
それらはまさに「浜崎あゆみ」が流行という次元を超え、「信仰」の対象と言っても過言ではない状況に位置していたことを意味している。
しかし、人々達の「信仰」も長くは続かなかった。そこには流れる時代による「現実」があったからだ。
目次
- 歌姫「浜崎あゆみ」の誕生
- 歌姫を作り上げた男「松浦勝人」
- 自らの孤独や不安を歌詞にした世界観
- 時代を代表するアーティストとなった「浜崎あゆみ」
- 「浜崎あゆみ」はなぜ支持層を失ったのか?
- 浜崎あゆみとリスナーが直面した現実
歌姫「浜崎あゆみ」の誕生
1998年に歌手としてデビューした「浜崎あゆみ」だが、俗に言う「業界歴」は小学生時代から始まっており、その芸能生活は20年以上となっている。
活動当初は、地元企業のPRポスターへの出演など細々とした活動がメインであったが、その後、地元事務所の紹介により東京のサンミュージックに移籍し、中学卒業とともに上京する。
上京後の仕事は「ドラマ」や「映画」、「Vシネマ」などを中心とした女優業であったが、パッとする役回りは少なく、のちのカリスマと言われる輝きの片鱗を見ることはできなかった。
有名な話ではあるが、「浜崎あゆみ」として歌手デビューする以前の1995年に「AYUMI」名義でアルバム『NOTHING FROM NOTHING』をリリースしており、実質的な歌手デビューはこの年になる。
少しばかり、思い出話になってしまうのだが、女優「浜崎あゆみ」が出演していたドラマの放送当時、筆者は小学生だった。「未成年」は視聴していなかったが、「闇のパープル・アイ」に関してはリアルタイムで毎週視聴していた。むしろ再放送まで見ていた。それなのに、浜崎あゆみの存在に関しては全く覚えていない。それよりも、「雛形あきこ」の方が圧倒的に記憶に残っている。当時の女優としての「浜崎あゆみ」の存在感は、それ位のものでしかなかったのだ。
※闇のパープル・アイ 漫画が原作のドラマ。主役の女子が豹に変身する話。当時、人気の高かった雛形あきこが主演しており、若干話題になった。
そんな彼女に転機が訪れたのは、 当時、 エイベックスの専務を担当していた「松浦勝人」通称「MAXマツウラ」との出会いだろう。
1996年にサンミュージックとの契約が終了した彼女は、avex(エイベックス)にて歌手を目指すためニューヨークへ渡るのだ。
そして、1998年歌手「浜崎あゆみ」はデビューを果たす。
歌姫を作り上げた男「松浦勝人」
歌手「浜崎あゆみ」の才能を見出し、成功させた仕掛け人といえば、レコード会社avexの代表「松浦勝人」だろう。(当時は専務)
彼の経歴に関しては皆さんも御存知だとは思うが、とにかく時代を読み取る嗅覚に長けていた印象を受ける。
特に若年層を対象とした音楽のマーケティング戦略に優れており、時代のニーズを捉えた楽曲の提供や、国内でのダンスミュージック浸透にも貢献している。中でも音楽プロデューサー「小室哲哉」とのタッグはJPOPシーンに旋風を巻き起こし、avexの発展に大きく貢献することとなる。
しかし、時代の流れとともに若者たちの求める音楽にも変化が訪れたのだ。
一方、小室さんとの関係はますます悪化していった。
当時の僕の最大のミッションは、小室さん無しでavexを自立させること。
そのため、僕自身でアーティストをプロデュースする必要があった。
ちょうどELTをデビューさせることが決まり、それに没頭していたころだ。
1996年の8月にデビューしたELT。
華々しく売れていくELTの裏で、
僕は次のアーティストのデビューへ向けて全力で動いていた。
それがayuだ。
引用元URL ayuとの出会い|松浦勝人オフィシャルブログ「仕事が遊びで遊びが仕事」Powered by Ameba
こうして「女子高生のカリスマ浜崎あゆみ」は、敏腕プロデューサーの手によって誕生することとなる。
自らの孤独や不安を歌詞にした世界観
華々しい印象の強い浜崎あゆみだが、楽曲の世界観は孤独や不安、自らの後悔や絶望などがテーマとされており、悲観的な内容が多いことが特徴だ。
さらにそれらの歌詞は全て浜崎あゆみ自身が作詞を担当し、等身大の言葉で投げかける彼女の歌詞に多くのリスナーが自己投影をし共感するのだった。そしてデビュー当初より彼女を強く支持した層が10代から20代の女性である。
とは言っても、全ての女性が孤独や自らの存在価値に不安を抱えて生きていたのだろうか?多感な時期なので絶対とは言えないが、若年層の女性たちが皆、揃って精神的に弱っているわけではない。そんな地雷ばかりの世の中絶望だ。
では、なぜ彼女はここまで多くの支持を得られたのであろうか?
優れた楽曲もさることながら、彼女の問いかけるようなストレートな歌詞は、誰しもが持つ心の闇について考えさせる内容となっている。それゆえ、浜崎あゆみの歌の前では誰しもが悲劇のヒロインになることができたのであろう。その結果、多くの人々から共感や支持を集め、若年層のカリスマに位置することとなった。
時代を代表するアーティストとなった「浜崎あゆみ」
彼女のデビューした98年は、宇多田ヒカルや椎名林檎、aikoなど影響力の強いアーティスト達がデビューした年でもある。そして、浜崎あゆみも強烈な存在感で時代を牽引していたのだ。
その中でも、今なお語り継がれているのが、浜崎あゆみと宇多田ヒカルが同日にアルバムをリリースしたことではないだろうか?
本来であればアーティストのキャリアを考えオリコン1位を狙いたいところであるが、今回はあえて同日にリリースする対決という形が取られた。
軍配は宇多田ヒカルに上がったものの、累計の売上枚数は500万枚以上と言われており、日本国内でも屈指の実績となっている。
そんな、浜崎あゆみに時代と共にある変化が訪れた。それは、彼女の支持層の離反である。
「浜崎あゆみ」はなぜ支持層を失ったのか?
まず、昨年2016年にオリコンニュースで発表された「音楽ファン2万人が選ぶ 好きなアーティストランキング」の結果を見ていただこう。
順位 |
アーティスト |
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第13回 音楽ファン2万人が選ぶ 好きなアーティストランキング 2016 | ORICON NEWS
10代が支持するアーティストには流石に98年組の姿は見られず、「西野カナ」や「miwa」などの新時代の女性アーティストが台頭している。
特に、切ない恋愛観などを歌う「西野カナ」の存在は、浜崎あゆみに取って代わる「女子高生世代のカリスマ」の出現だ。
続いて、リアルタイムで「浜崎あゆみ」の存在に触れていた30代の支持するアーティスト見てみよう。
順位 | アーティスト |
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Mr.Children | |
宇多田ヒカル | |
安室奈美恵 | |
4 | B'z |
5 | いきものがかり |
6 | SMAP |
7 | 嵐 |
8 | スピッツ |
9 | aiko |
10 | KinKi Kids |
第13回 音楽ファン2万人が選ぶ 好きなアーティストランキング 2016 | ORICON NEWS
ミスチルやB'zなど、JPOPシーンを支える大御所アーティストの名前がノミネートされている。
注目すべき点は、宇多田ヒカルやaikoなど98年デビュー組がノミネートされているにも関わらず、浜崎あゆみの名前は見当たらないことだ。
当時のセールスを考えればノミネートされていてもおかしくない彼女の名前が、なぜ見当たらないのだろうか?
浜崎あゆみとリスナーが直面した現実
まず、浜崎あゆみが直面した現実はシンプルな「年齢」的な問題である。宇多田ヒカルの変わらぬ人気を見れば、アーティストにとって年齢など問題ないと思われるかもしれないが、浜崎あゆみの場合そういった問題は非常にネックとなってしまっている。
先に紹介したように彼女のターゲット層は女子中高生が中心だ。そして、それらの層に問いかけるような歌詞は、多くの共感を生み彼女をカリスマとしての地位に押し上げた。
そういった「共感」を生むにあたって、アーティストとリスナーの年齢差は、自己投影を難しくしてしまう原因となる。その結果、新たなカリスマ・西野カナが若年層から支持されたのであろう。
しかしながら、彼女から強い影響を受けた世代は、歳を重ねても彼女を支持し続けるのではないだろうか?そんな疑問も残るが、結局のところ当時10代だった支持層も現在では30代。年齢的にも立派な大人だ。そういった年齢になれば当然、結婚や出産などの新たな現実に直面することとなる。
当然、浜崎あゆみ自身も結婚や離婚の経験を自らの作品に反映させてはいるが、彼女に対して全盛期の印象が強い当時のリスナーにとっては、過去作品は既に共感できるものではなく、極端な話をすれば「玉子が1パック98円以下で中々購入ができない」方が現在の彼女たちが共感できる悩みなのだ。
以上のような、浜崎あゆみとリスナーの双方に訪れた時の流れによるに現実の変化が、彼女の世界観を共感できないものにしてしまったのだろう。