アーティストの購買層を明確にするためにも、コンセプトって部分はとっても重要なポイントだと筆者は考えているんです。皆さんも現在人気のアーティストを思い浮かべてください。きっと他のアーティストにはない明確なコンセプトがありますよね?
コンセプトって料理で言えばスパイス的な存在であって、楽曲のクオリティだけでは補えない部分に一味加えてくれる大切な役割を持っています。ある意味キャラ作りにも近い所ではありますが、アーティストの世界観をしっかり作り上げる事はリスナーを陶酔させるためには必要不可欠なものなのです。
しかし、ここ最近では無尽蔵にアーティストが生産されているため、コンセプトも似たり寄ったりとなっており、レコード会社としては何とも悩ましい状況が続いています。そんな難しい時代を「エロ」と「ロック」で乗り越えた女性アーティストが「LiSA」なのです。
目次
- 「LiSA」の主戦場となるアニソン業界は音楽業界でも屈指の激戦区
- アニソン界の歌姫「LiSA」という存在
- アニソン歌手としてのオリジナリティの確立
- LiSAというアーティストの最大の武器は「エロ」なのではないだろうか?
「LiSA」の主戦場となるアニソン業界は音楽業界でも屈指の激戦区
一昔前はアニメソングなんて言えばオタクが聴くものなんてイメージが強かったんだけど、ここ最近では作品を担当する声優さんだけではなく、売り出し中の若手アーティストや人気バンドが担当することも多いんですよ。
そういった事情もあり、以前と比べてリスナーの層が広まった印象を受けるんですが、放映される作品の数が爆発的に増えた訳ではないため、タイアップを狙うとなると少ないパイを多くのアーティストで奪い合う超激戦状態となっています。
今やアニソンは一般リスナーへの認知を高められる有効な広告手段であり、アニ豚を喜ばすためだけに存在している訳ではないのです。
そんな過酷な戦場で、見事な戦果(主題歌などのタイアップ)を上げている「LiSA」のコンセプトと購買層について考えてみましょう。
アニソン界の歌姫「LiSA」という存在
上で紹介しているデビューシングル『oath sign』を聴いていただければわかるように、デビュー当初のLiSAの音楽性は超正統派のアニメソング。
ストリングスの気品ある音色に、要所要所に挿入されるシャープなギターサウンド、そして張りのあるLiSAの力強い歌声は、まさにアニメソングの王道。放送時間の関係でオープニングに使用できる時間は90秒と短いながら、1コーラスを見事に完結させるアニソンの緻密さには毎度のことながら頭が下がります。「あ〜この辺でタイトルかな〜」とか「あ〜ここで登場人物が全員揃う場面だな〜」などを容易に想像できてしまう程、楽曲がカッチリしているのです。そんな伝統工芸にも近しい匠の作品「アニメソング」のボーカルを務める事が多いのがLiSAなのです。
以上を見てもらえばわかるように、彼女の購買層はアニメユーザーであり、音楽のコンセプトも王道のアニソングであります。当然、タイアップ作品となりますので露出の機会も多く、LiSAというアーティストの名前は瞬く間に広がっていくのだろうと考えがちなのですが、こちらの業界の恐ろしい所は担当するアニメ作品に応じて楽曲の評価が変わってしまうところではないでしょうか?
ライトユーザーも注目するアニメ作品、例えば少年ジャンプ系の作品を原作としたアニメの主題歌を担当できれば購買層も多く、楽曲への注目度も高くなりますが、当然逆のパターンも存在しています。そういったマイナー作品のタイアップをしてしまうと、どんなに楽曲のクオリティが高かろうとリスナーの耳に触れる機会が減ってしまうため、デビュー当時のLiSAのようなアーティストには好ましくありません。
なぜなら彼女の購買層はアニメ作品のオープニング曲という認識でLiSAの楽曲を購入しているリスナーが多く、LiSAというアーティストの固定のファンは少なかったからです。とはいえ、所属事務所の力も強かったのか、幸運にも彼女は人気アニメのタイアップを多く獲得し「アニソン界の女王」の道を歩んで行くのですが、そういった危うい基盤だからこそ、新たなコンセプトを導入し「LiSA」というアーティストの存在を周知させなければならなかったのです。
アニソン歌手としてのオリジナリティの確立
デビュー以降、2作品連続でヒットアニメの主題歌を担当するという幸運に恵まれたLiSAではあるが、同様のコンセプトを持ったアーティストも多く、やや独自性に欠けた印象を受けてしまいます。
上の動画で紹介している「藍井エイル」はLiSAと同じくアニメソングをメインに活動をしているアーティストです。曲を聴き比べてもわかるように、楽曲のコンセプトや進行、ましてや歌唱方法までもがLiSAと似たり寄ったりとなっているのです。
双方ともにアニメソングという枠の中では優れたアーティストではありますが、明確な違いとなるとヴィジュアルやタイアップしているアニメ作品の差程度しかなく、LiSA独自のアイディンティティとは言い難いコンセプトでしかありません。
そんな状況を打開し、アーティスト「LiSA」としてのファンの獲得を目的に、まず取り入れられたコンセプトが「ロック」なのでしょう。
3rdシングル『best day, best way』では、新たなコンセプトに対する実験的な要素が垣間見られます。
まず楽曲面の変化としては、作詞作曲に「UNISON SQUARE GARDE」の“田淵 智也”、編曲にはロックバンドのサウンド・プロデユースで有名な“akkin”という豪華な布陣にて、LiSAの新たなコンセプトである「ロック」を作り上げているのです。
次にミュージックビデオの印象もガラリと変わり、力強い孤高のアーティストを表現していた世界観から、バックバンドを従えたポップでロックな設定に変貌を遂げています。
コスプレチックな衣装やバックバンドの大袈裟なアクションは、やや過剰なロック演出ではありますが、独自性という部分を強調しようとしている姿勢はLiSAにとって正解だった感じですね。
さらに今作品の実験要素は続いていきます。LiSAにとって初となる両A面シングルとなった今作ですが、なんと2曲目に収録されている『L.Miranic』では、作曲をレゲエパンクバンド「SiM」の“MAH”が担当し、編曲は“akkin”が担当するという、最近のロックバンドのファンにとっては最強にも近い豪華布陣で、LiSAのロック転換を検証していったのです。
狙いは見事成功。今では「ロックヒロイン」という二つ名まで手に入れ、アニメソングという枠にとらわれない広いジャンルで活躍をしているのです。
2017年に開催されたSiM主催のフェス「DEAD POP FESTiVAL」では、なんとMAHとの共演まで果たしています。意外とお似合いな感じ・・・。もうアニソンアイドルの枠を完全に超えてしまいましたね。
それでは最後に、筆者が思うLiSAの最大の武器「エロ」について説明をいたしましょう。
LiSAというアーティストの最大の武器は「エロ」なのではないだろうか?
ここまで散々LiSAの競合アーティストに差を付けるためのコンセプトについて考えてみたのだが、結局の所、彼女に加えられた最大のスパイスは「エロさ」なのではないだろうか?いや、こう、倖田來未みたいなワイルドな感じではなく、もっとチラリズム的な所々で見せる感じ?女の子が見ても「LiSAちゃんエロカワイイ〜」みたいな部分。
よくよく彼女を振り返ってみると、群を抜いた歌唱力がある訳でもないし、冒頭で説明したようにアニソンのテンプレ的な楽曲が多く、誰が歌ってもあんまり変わらない印象を受けてしまう。現状を打破すべく、3rdシングル位から新たにロックアイドルとしてのコンセプトを確立してはみたものの、演出的なロック押しって感じも強く、楽曲もやっぱりアニメタイアップ曲なのでパターンがほとんど同じ。
そして彼女の最大の問題点は、可愛いは可愛いけど、過去のアニソンの歌姫たちが持っていた「清純さ」や「透明感」って部分が弱いってところ。そういった部分を重要視してしまうのは、やっぱり過去に「声優」系の歌姫が多かったからなのでしょうか?
なんだかんだ1stシングル、2ndシングル共にヒットはしているものの、清純さなどのパラメーターの低さから、アニソンユーザー達の絶対なる歌姫として君臨し続けるのは難しそうなため、購買層の拡大を狙い「エロ路線」の付与をしたのではないかと筆者は考えている。
2ndシングル『crossing field』の頃の彼女を見て頂きたい。いかにもアニソンアイドルって感じの風貌、そして現在の彼女と比べると肉付きも悪く、エロという要素は皆無である。なぜ、こういった路線のアーティストは「黒」や「赤」を基調とした「ゴスパンク」風の衣装を着用してしまうのだろうか。謎である。
そんな彼女のエロさが前面に押し出されたのが3rdシングルに収録されている『L.Miranic』なのだろう。LiSAに残されていた清純の欠片をぶん投げた潔いエロさである。しかしながら、そういった方向転換はLiSAというキャラクターを活かす上で最大の効果を発揮した。
彼女のライブの映像を見て頂きたい。デビュー当時の彼女と比較すると明らかに自然な印象を受ける。ポップでキュート、そしてほんの少しエロい彼女のパフォーマンスは、力強くも孤高で清純なアニソンアイドルとしては掛け離れているものの、多くの購買層に支持されるマルチなものなのだ。本来の活動方針であったらイメージダウンになってしまうかもしれない発言や行動も、現在の彼女のスタイルならばポジティブに作用するはず。清純さというコンセプトはLiSAという存在には、重荷でしかなかったのだ。それにしても健康的な太ももがエロい。
以上のように「ロック」というコンセプト以上に、「エロ」というコンセプトは彼女の存在感を活かす上で有効であり、様々なシュチュエーションで活躍できるLiSAという存在を多くのリスナーに知らしめることが出来たのだ。
それでは最後に、バックバンドにBOUNTY HUNTERを着せることで無理やりロック感を強調しつつ、ミュージックビデオ1分15秒目のLiSAの胸の谷間のカットインの必要性は本当にあるのか?で話題の『だってアタシのヒーロー。』を紹介して終わりにしようと思う。やっぱりLiSAってエロいよね!!
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