16年ぶりにリリースされたHi-STANDARDの新作「ANOTHER STARTING LINE」
同タイトルはノープロモーションのゲリラリリースにも関わらず、初日での販売枚数が4.8万枚という異例のスタートを切ったのだ。何が異例って、現代の音楽業界では洗脳的な販売戦略が一般化しており、オリコン・チャートを見てもらえば分かるように、大体は何かしらのタイアップされた楽曲となっている。それらは、メディア露出の多さ=販売枚数と言っても過言ではない形をあらわしているのだが、そんな販売戦略を否定するような形でリリースされた今作は、ブームを戦略的に操作する現代社会にとっては「アンチテーゼ」的な作品なのである。
本日はそんなHi-STANDARDの注目の最新作「ANOTHER STARTING LINE」について、音楽業界とかよくわかっていない筆者の主観だらけの偏った考えを紹介しよう。
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Hi-STANDARDのノープロモーションはなぜ成功したのか?
今作をリリースするにあたり一切の広告宣伝を使用しない「ノープロモーション」を選んだHi-STANDARD。情報優先の現代社会では不利と思われる条件にも関わらず、初動セールスは順調に推移し、多数のメディアにも取り上げられるなど話題性も抜群となっている。
なぜそんな「ノープロモーション」が成功したのだろうか?それは「ノープロモーション」が販売戦略の1つだったからだと筆者は考える。それでは今作の成功理由を紹介しよう。
高品質が保証されている「Hi-STANDARD」というブランド
90年台のインディーズバンドを好んで聞いていた方の中で、Hi-STANDARDの名前を知らない人はいないと思う。いや、絶対知っているはずだ!と断言できるほどハイスタは偉大なバンドである。
彼らという存在があったからこそ、「みんなで歌って踊れる楽しいパンク・ロック」メロコアというジャンルが確立され、シーンを一般層に浸透させることができたのだ。結果、多くのフォロワーとなるアーティストが誕生し、アンダーグラウンドであったパンク・ロックをメジャーシーンに押し上げることができたのだ。
そして、その人気は過去作品のセールスからも伺うことができる。インディーズにも関わらず1stアルバム「GROWING UP」は海外版を含め70万枚、2ndアルバム「ANGRY FIST」では50万枚、3rdアルバムの「MAKING THE ROAD」では脅威の100万枚を達成している。
以上の実績からわかるとおり、Hi-STANDARDというブランドの知名度と作品の質の高さがあってこそだろう。
16年ぶりの新作という話題性
1999年にリリースした「MAKING THE ROAD」が100万枚を超えるミリオンヒットとなり、翌年に開催された「AIR JAM2000」では3万枚のチケット僅か30分で完売するなど、まさに絶頂期を迎えたHi-STANDARDだったが、すでにバンドとしての彼らは崩壊寸前の状態だった。そして、2000年8月の活動を最後にHi-STANDARDはステージから姿を消した。
それから3年後となる2003年。横山健より正式に「活動休止」が宣言される。解散説などが流れる中、ファンたちには希望を与える発言ではあったが、その後の難波と横山の深い確執を感じさせるコメントの数々に、誰もが「活動再開」は望めないと諦め始めていた・・・
2011年日本に未曾有の災害「東日本大震災」訪れ、人々から笑顔を奪い去った。「少しでも人々の笑顔を取り戻したい」彼らは自身にできることを模索した。偽善や建前ではなく、本当に自分たちができることを。そんな状況で彼らの脳裏に浮かんだ言葉が「Hi-STANDARD」だった。そして彼らは活動再開を宣言する。
見事活動を再開したHi-STANDARDだったが、ファンたちは1つの不安があった。
「活動は再開したが、一向に新作がリリースされない」
「みんなを笑顔にするために再開はしたが、時が来たら各々の活動に戻ってしまうのではないだろうか?」
そんな不安を拭い去る、16年ぶりの新作に注目が集まらない訳はない。
SNSによるスピーディーな口コミ
Hi-STANDARDがデビューした当時はインディーズというジャンルも確立されておらず、大手メディアからは注目すらされていなかった。しかし、彼らのアルバムはどれも50万枚以上のセールスを達成している。ましてやパンク・ロックという極一部の人間しか興味を持たないニッチなジャンルでだ。
そんなハイスタを知る切っ掛けの大多数をしめるのが「友人に勧められた」や「文化祭やライブハウスでコピーバンドをみた」などのメディア以外での情報ではないだろうか?(この辺に関しては筆者の地域での印象なので違っていたらごめんなさい。)
インディーズというスタイルの性質上、メディアからの発信はほぼ皆無の中、全国的に彼らの存在を広めた言ったのがまさに「口コミ」の力である。
当時は携帯電話も一般に普及しておらず、インターネットなんて言葉すら認知されていなかった世の中で、ハイスタは人から人へ、文字通り「口コミ」で広がっていった。それゆえ「MAKING THE ROAD」以外のアルバムは初動も悪く、リリース当時は50万枚以上のヒットをする作品になるなど思われてもいなかったはずだ。しかし、彼らの優れた楽曲が収録されたアルバムは口コミによって、ロングセールスし今ではヒット作と言われている。
現在ではそんな口コミを、いつでも、どこでも、だれにでも、SNSを利用することで発信できる。そのため今作「ANOTHER STARTING LINE」はゲリラリリースにも関わらず、初動が5万枚近くを達成出来たのだ。
たまたま発売日にTSUTAYA行った筆者も、見つけるなり友人にライン、ツイッター、FBで情報を発信してしまった・・・
まじかよ!!!!!!!
— すあま Mrs.WiENER (@suama408) 2016年10月4日
タワレコきたら!!!!!!
ハイスタ!!!!!!!
フューーーーーーーー!!!!!!! pic.twitter.com/Jk3Znap0iC
購入できる場所が限られている
今回の新作は、10月26日まで配信も通販もされない予定となっている。
購入できるのはCDショップでの店頭販売のみとなっており、現代の販売戦略では考えられない事態だ。しかし、そういった状況はCDショップとしては願ってもない状況であった。流通システムが発展した昨今では、小売業の体質が変化し、ネット通販が台頭する形となっている。そのため路面店を構えるCDショップや書店は苦戦を強いられているのだ。
そんな中、リリースされた今作は、CDショップの店頭でしか買えないため、ショップも大々的に売場を設け販売に乗り出したのだ。事前に「路面店優先でCDを発売するからヨロシクね!!」なんて話もあったかもしれないが、多くの店舗が今作を猛プッシュする販売姿勢が取られていた。ましてや、あのHi-STANDARD16年ぶりの新作だ。話題性抜群である。
今回のゲリラリリースの成功には、販売店の後押しもあったのだろう。普通に棚に置かれているだけでは、流石にここまでの初動はみられなかったはず。
ちなみにアマゾンで販売しているのは転売屋なので購入はしないように。通常価格は1200円です。
《まとめ》戦略的な部分は多々感じるが、Hi-STANDARDの強い意志は健在している。
有名な話ではあるがHi-STANDARDは過去にもレコード店限定で「I DON'T NEED TROUBLE BECAUSE OF...MONEY」をゲリラリリースしている。
当時の彼らの意図は「プロモーショによる力で売れたと思われたくない」「レコード店に足を運んでくるれるファンにサプライズプレゼントをしたい」とコメントしている。
今回のゲリラリリースに関しては戦略的な部分も多々感じられるが、根底にあるのは上記のようなHi-STANDARDの音楽への純粋な評価の確認と、自分たちを支えてくれるファンたちへのサービスではないだろうか。是非とも来年にはフル・アルバムの発売を期待したい!!